世界一の長寿国となった我が国が目指さなければならないのは、「より長く」に「よりよく」を重ねた真の長寿社会です。そのためには、我々一人一人が、科学文明の発達に伴った医療機器や技術の進歩だけにたよることなく、自らの努力によって解決していかなければならない問題がたくさんあります。ここでは、寝たきりになる原因の約40%を占めるとされている転倒による骨折に対して、直接・間接的に大きな影響を与える骨粗鬆症について考えてみます。
骨粗鬆症とは骨格内のカルシウム量の減少が、日常生活にも耐えられないほど強い骨萎縮を招いた状態のことをいいます。下図は加齢に伴う体内の総カルシウム量の低下と、骨粗鬆症の関係を表わしたものです。現在、日本人の65歳以上の女性の約1/2、80歳以上の男性の約1/2が骨粗鬆症に罹患しているといわれています。
一見石に似て無機質の塊のような外観をしている骨もたくさんの細胞からなる生きた組織です。骨はハーバース管と呼ばれるところで、破骨細胞が骨吸収を行い、骨芽細胞が骨形成を行っています。この両者の活性の差によって骨粗鬆症に向かうのか、しっかりした骨に向かうのかが決まります。骨内の血流が盛んになるとうっ血により酸性に傾いていた血液が中性となり、骨溶解が生じにくくなります。さらに、骨内血流の増大により血液の酸素濃度が上昇すると骨芽細胞の活性が増し骨形成が盛んになります。また、細胞とは関係なく、骨の体積の約50%を占めるコラーゲンに圧縮力が加わると、カルシウムを吸着して骨を強くするとされています。
骨粗鬆症に対する、薬物治療という側面は医師にまかせるとして、予防と改善に関しての大きな柱は骨形成に必要な栄養素を摂取すること、すなわち栄養と、代謝のよい身体を作ること、すなわち運動です。
栄養面からの注意点はカルシウム摂取量の増大とカルシウムの吸収をよくするビタミンD(ビタミンDに関しては日光浴も大切)、良質のたんぱく、マグネシウムの摂取です。反対に骨にとってマイナスになる栄養素であるリン、ナトリウム、食物繊維の過剰摂取に気をつけることも大切です。また、アルコールのとりすぎはカルシウムの吸収を悪くして、ビタミンDの働きを抑えるので注意が必要です。
運動面からは、「歩行」または「歩行動作を伴う比較的運動強度の低いスポーツ」を毎日コツコツと続けることです。特に、加齢がすすみ骨粗鬆症の疑いがもたれる場合は運動強度を低く設定して実施することが大切です。これは単に二次的な障害を予防するという観点からだけではなく、骨粗鬆症においては非常に低い運動強度においても改善のみられたケースが数多く報告されているからです。
より一層の高齢化が急速にすすむ我が国において、このままでは「いつ骨折が生じるかわからない」「いつ寝たきりになっても不思議でない」などのリスクを背負うことになる骨粗鬆症は、間違いなく増えつづけます。
しかし、骨粗鬆症は我々一人一人のほんのちょっとしたバランスを心掛けた食事と簡単な運動の習慣化で改善や予防ができるものでもあります