上図は体力水準、トレーニング強度およびトレーニング効果の関係を表わしています。
横軸はトレーニング前の最大酸素摂取量(一般の人では40歳前後の女性の平均値が30ml/kg/min弱、男性が35ml/kg/min強、超一流のマラソンランナーは約70ml/kg/min前後)を表わしています。縦軸にはトレーニングによる最大酸素摂取量の増加率を表わしています。
この図は、たとえばトレーニング前の最大酸素摂取量が30ml/kg/minの人であれば最大酸素摂取量の35%、50%、65%、80%のどの強度で運動を実施しても運動効果を得ることができ、最も強度の低い35%の際でも約4%前後の最大酸素摂取量の増加が望めることを意味しています。しかし、トレーニング前の最大酸素摂取量が60ml/kg/minと非常に高く有酸素能力に優れた人であれば最大酸素摂取量の35%、50%、65%の範囲では、どの強度で運動を実施しても運動効果を得ることはできず、むしろ最大酸素摂取量の低下を招き、80%強度で初めて3%程度の効果を得ることができることを意味しています。
また、トレーニング前の最大酸素摂取量が30ml/kg/minのところと40ml/kg/minのところを比較してみてください。30ml/kg/minのところは最大酸素摂取量の35%でトレーニングした場合と80%でトレーニングをした場合の最大酸素摂取量の増加率の差はそんなに大きくありません。これに対して、最大酸素摂取量の40ml/kg/minのところではその差は非常に大きなものになっています。
安全面から常に運動強度の上限値に対する注意が必要であることはいうまでもありませんが、上記のことは比較的体力レベルの低い場合は、運動強度による運動効果の差は比較的少ないことを表わしており、より安全性を重視して低い運動強度で実施することが望ましいことを示唆しています。また、体力の高まりと共に運動強度の下限値に対する注意が必要となり、体力レベルがある一定水準以上高くなれば、運動効果を得ることのできる運動強度の範囲は非常に狭く、高くなり、高度なトレーニングが必要となることも意味しています。
健康づくり運動において、基本的には体力レベルの低い人は運動強度を低めに、体力レベルの高い人は運動強度を高めに設定する必要があります。
ここでは運動強度の側面から話しを進めましたが、体力レベルの高い人ほど許容される運動の範囲は広くなりますが、運動効果を得ることのできる強度の範囲は狭く、そして高くなっていきます。しかし、高い運動強度での運動の実施はけがや障害の発生率を高くしたり、精神的な負担を増大させ、運動そのものの中止を余儀なくし、体力を急速に低下させる引き金ともなります。
大変難しいことですが、体力レベル非常に高い人は、必要以上に体力の向上を追い求めることなく、維持に努めながら、ある程度は加齢に伴う体力の低下に身をまかせるのが望ましいのかも知れません。