喫煙には健康上いろいろな有害な作用があることはすでによく知られています。中でも、直接我々の生命を脅かすガン、脳血管疾患、心疾患などに代表される成人病の重要なリスクファクター(危険因子)であることはいうまでもありません。
しかし、ここでは喫煙の身体に対する影響の中で、特に運動との関係に焦点を合わせて考えてみましょう
人間が運動をする際の筋肉へのエネルギーの供給方法には、大きく酸素を必要としないATP-CP系および乳酸性機構と呼ばれる無酸素性過程と酸素を必要とする有酸素性過程と呼ばれる方法に分けられます。無酸素性過程は大きな力を発揮することができますが、その量が少なく約41秒でエネルギー切れをおこしてしまいます。これに対して有酸素性過程は大きな力は発揮できませんが運動を長く持続することができます。しかし、有酸素性過程はエネルギーの供給速度が遅いため、ここではあまり詳しくは触れませんが、より速く、継続してエネルギーを供給し続けるには体内に酸素を取り込む能力が重要な要素となります。
たばこに、含まれる一酸化炭素(CO)は酸素を運ぶ役目をするヘモグロビン(Hb)と親和性が高いため、きわめて希薄なCOを吸入してもHbがCOと結合して一酸化炭素ヘモグロビン(Hb-CO)になります。
たばこの中には約4%のCOが含まれていて、1日に20本喫煙する人では常に5〜10%のHbがHb-COになるといわれています。
COと結合したHbは酸素と結合することができないので、体内に酸素を運べなくなります。10%のHb-COが生じると血液の酸素運搬能力は単純に90%になります。
さらに悪いことにCOは正常なHb(Hb-COにならなかったHb)にも悪影響を及ぼします。酸素とは結びつくものの今度は離れにくい性質に変えてしまいます。せっかく酸素を運ぶことができても酸素を必要とする体内で離れにくくなってしまうのです。この影響は特に脳と活動筋に顕著に現れます。CO中毒の際に頭痛や意識障害が起こったり、また意識はあっても四肢の筋力が低下して行動できなくなるのもそのためです。
Hb-COの濃度と最大酸素摂取量および走行可能時間との関係ではHb-COが10%になると最大酸素摂取量(体内に酸素を取り込む能力の最大値)は約10%減少し、走行時間は約30%も低下するという報告もあります。