「健康づくり運動において強すぎる運動は必要ありません」と言うと、身体を速く強く動かすような運動は必要でないと考えがちです。しかし、身体を速く動かすための機能は、身体を適度に速く動かすことによってのみ刺激することができます。転倒から身を守るにはある程度身体を速く動かすような運動も必要です。
筋肉は筋線維という細長い細胞の束でできています。この筋線維はその性質によって現在の所大きく3種類に分類されています。ゆっくりしか収縮しないが疲れにくいタイプ1(ローマ数字の1)。速く収縮するけれど疲れやすいタイプ2(ローマ数字の2)B。そしてその中間的存在のタイプ?(ローマ数字の2)Aです。また、少々考え方が異なるのでまったく同じとは言えませんがSO線維、FOG線維、FG線維と言った分類の方法もあります。これを大きく2種類に分類したものが遅筋、速筋または赤筋、白筋と言われる分類方法です。
どのような分類方法が望ましいかは別にして、下図をご覧ください。
横軸には運動強度として最大酸素摂取量に対する率を取っています。単純に運動の強さと考えてください。縦軸には活動的な筋線維の割合を示しています。
運動が弱い段階、たとえば歩行運動などの約40%Vo2maxまでの運動では、ゆっくりしか収縮しないが疲れにくいタイプ1しか使われていません。次に、一般的な健康づくりのジョギングのレベルである約40〜75%Vo2max程度まで運動の強さが上がると、タイプ1に加えてタイプ2Aが使われています。そしてランニングのレベルに入ってくる約75%Vo2max以上になって始めて速く収縮するけれど疲れやすいタイプ2Bも使われることを表しています。
このことは、転倒から身を守る際などのすばやくそして大きな力を必要とする動きに必要な筋線維は、一般的なジョギング程度の運動の強さでは刺激できないことを意味しています。つまり呼吸循環機能を維持増進するには約40〜75%Vo2max程度の強さで運動を実施することが大切ですが、すばやく反応して大きな力を必要とする動きの際に力を発揮する筋線維に刺激を与えるには約75%Vo2max以上の強さの運動が必要であることを意味しています。
しかし、ここで何も全面的に力試しの必要性を説いている訳でも、ランニングの必要性を説いている訳でもありません。健康づくり運動の3本柱はあくまでもストレッチ運動、エアロビック運動、局所筋運動であり、この3本柱を中心に展開することが大切です。ただこの3本柱を正しく実践できるならば、同時にある程度手を早く動かしたり、足を早く動かしたりする運動を安全にそして効果的に取り入れていく工夫も大切だということです。
あくまでも一例ですが、健康づくり運動のプログラムの中に、若くて体力レベルの高い人は球技などのスポーツを、体力レベルの低い人は椅子に座って短時間に足を小刻みに速く動かすような運動を工夫して取り入れていくことも大切です。