人間は筋肉の収縮により身体を動かすことができます。筋肉の収縮によって生じた力は骨に伝わり、関節を中心としたテコの働きにより力を外に伝えます。ここではテコの原理と筋肉、関節の動きについて考えてみましょう。
テコの原理には下図のように3種類あります。
第1種のテコは足底屈(つま先を伸ばす)等に使われています。
第2種のテコは人間の関節の動きにはほとんど用いられていません。
第3種のテコは肘関節の屈曲(曲げる)等に使われています。人間の関節の動きにはこの第3種のテコが数多く使われています。
テコの原理に
〔OW(OからWの距離)×W(Wの重さ)=OF(OからFの距離)×F(Fにかかる力)〕
という関係があることを思い出して下図をご覧下さい。
足関節は第1種のテコで、OW:OF=3.1:1です。Fに付着している下腿三頭筋が収縮することにより足底屈が行われます。たとえば下腿三頭筋が200kgの力で収縮しても 1×200=3.1×χ で足先には約65kgの力しか伝わりません。
同様に肘関節は第3種のテコで、OW:OF=4.9:1です。Fに付着している上腕二頭筋が収縮することにより腕の屈曲がおこなわれます。たとえば上腕二頭筋が100kgの力で収縮しても 4.9×χ=1×100 で手首のところには約20kgの力しか伝わりません。
筋肉が150kgもの力を出しているにもかかわらず65kg・・・。100kgの力を出しているにもかかわらず20kgの力しか伝わらない・・・。なぜこのような効率の悪い構造になっているのでしょうか。もし、肘関節がOW:OF=1:1であれば、上腕二頭筋が100kgの力で収縮すれば手首のところにも確実に100kgの力が伝わります。ところが手首の位置の移動する距離と筋肉の収縮する長さも同じになります。たとえば、手首の位置を20cm移動させようとすれば上腕二頭筋も20cm収縮しなければならなくなってしまいます。
人間の関節のテコのほとんどは、筋肉では大きな力が必要になるもののほんの僅かな筋肉の収縮で、末端を大きく、そして速く動かすことができるようになっています。それだけに腱や筋肉に大きな負担がかかります。
腱や筋肉を障害から守るためにも、運動前の十分なウォーミング・アップが大切であることはいうまでもありません。