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特定保健指導における身体活動・運動指導のポイント


 メタボリック症候群は、内臓脂肪蓄積型の肥満に加え、高血圧、高脂血症、高血糖の3つのうち2つ以上があてはまるとメタボリック症候群、1つの場合をその予備群としています。このメタボリック症候群の概念を取り入れた特定保健指導における指導目標は内臓脂肪を減少させることです。内臓脂肪を減少させるには食習慣の改善により摂取エネルギー量を減少させるか、身体活動、運動習慣の改善により消費エネルギー量を増す必要があります。しかし、内臓脂肪蓄積型の肥満は膝、腰などの整形外科的障害に対するリスクを合わせ持つケースが数多く見られます。特定保健指導における身体活動、運動の指導は「代謝系の疾患と整形外科的障害のリスクを持ち合わせた方の消費エネルギー量を安全に増し、内臓脂肪を減少させるお手伝いをさせていただく」ことです。

 ※「エクササイズガイド2006」では、内臓脂肪を減少させるには、週に10EX(エクササイズ)かそれ以上の運動量が必要としています。たとえばこれを「かなり速歩」だけで満たすならば、1回30分で週4回や1回20分で週6回程度の実践が必要になります。運動習慣のまったくない人がいきなり1回30分で週4回の「かなり速歩」を継続的に実践できるかといえば少々疑問です。行動変容に結びつかなければ机上の空論で終わってしまいます。

 特定保健指導では、この問題を解決するために上表の※※「運動の行動変容ステージ」への理解と活用を薦めています。併せて、私自身は特に次の3点に注意をして指導させていただいています。

ポイント1 機能性を維持することを意識できれば活動性は向上する

 個別指導では指導時間が限られており、コンプライアンスのよい方など図1の上に示すように内臓脂肪の減少にとらわれ過ぎ、運動量を増すことだけに注意が行き、その結果、膝や腰等を痛めてしまう方が多く見られます。私は可能な限り、身体活動量を増す指導の前に、立つ、歩く能力等の維持を目的とした「首(上背)、腰(下腹)、膝(脚)の機能的な動きづくり」の情報の提供を心がけ、整形外科的障害の予防、改善について考えていただいています。この指導は、単に整形外科的障害を予防するだけでなく前熟考期、熟考期を中心に活動性を高める具体的な行動目標が見出せない場合においても図1の下に示すように十分効果は期待できます。

ポイント2 活動性を高める運動の3つのパターンを使い分ける。

 特定保健指導における積極的支援者に対する身体活動、運動の強さは6METs(ジョギングと歩行の組み合わせ)未満が望ましいとされています。内臓脂肪蓄積型の肥満は膝、腰などの整形外科的障害に対するリスクを合わせ持つケースが数多く見られることから、3METs(通常歩行)、4METs(速歩)、5METs(かなり速歩)または同等の強度の運動の指導が望まれます。これを図2に示すように3つのパターンに分けて考えています。

・運動の強度を意識した「1METを5METsにする運動」
 休日などに時間を作って週1、2回程度少し強さを意識して実践する運動。(週1回休日にかなり速歩を30分間行う。週に2回は犬の散歩の後かなり速歩を15分間行う。等)

・毎日の歩行量増を意識した「1METを3METsにする運動」
 平日などに短時間でも時間を作って週に複数回実践する運動。(週5回昼休みに通常歩行を15分間行う。帰宅時に週に3回は一駅歩く。等)

・家事や仕事中に活動性を上げること意識した「3METsを5METsにする運動」
 現在の家事や仕事中の身体活動の活動性を高める運動。(仕事中の移動は必ず階段を利用する。掃除はしっかり身体を動かすように張り切って行う。等)

 勿論「1METを5METsにする運動」が「1METを4METsにする運動」、「3METsを5METsにする運動」が「3METsを4METsにする運動」でもかまいません。また、それぞれは重なり合っていて厳密に区別することは不可能です。しかし、対象者がどのパターンでの改善が最も容易であるのかを見極めることにより行動目標が明確になりより具体化できます。また、1つのパターンの運動で10EXを満たすよりも2つのパターン、3つのパターンを組み合わせることにより10EXを満たすことが比較的容易になります。

ポイント3 行動目標を下げて2回目、3回目の指導を大切にする

 初回の指導で大切なことは、身体活動、運動に関する情報等の提供は行いますが、あくまでもご本人に具体的な行動目標を立てていただくことです。そして、その行動目標を次回の指導時まで実践出来たか否かをセルフモニタリングしていただくという運びとなります。その際、私が必ず最後に行うのが、ご本人の立てた行動目標を、エビデンスに多少問題を生じても余裕を持って継続して実践出来るレベルまで下げるという作業です。「運動の行動変容ステージ」やポイント1にも上がっていますが「成功体験の積み重ね」が行動変容につながります。行動目標は、次回指導日まで実践可能な内容でなければなりません。初回の指導は大切ですが2回目、3回目の行動目標の修正作業はより重要であると考えています。ですから、指導のスケジュールについては2回目、3回目までの期間を少し短く設定することが大切です。また、期間を短く設定するのが困難であれば、指導間の電話やE-mailの活用が大切であることは言うまでもありません。


※  「エクササイズガイド2006」は「http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf」からダウンロードできます。また、前項の「エクササイズガイド2006の活用」を参照して下さい。

※※ 「運動の行動変容ステージ」については多くの書籍等がありますのでそちらを参考にして下さい。

(亀澤)


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