「風になびく洗濯物」「お風呂でゴシゴシ」「目茶苦茶いいかも」の指導
健康づくり運動を考える上で、脚部や体幹部(腹部、腰部)に比べて少しおろそかになりがちですが大変重要な部位が上背部(胸部の反対側)です。日常の生活活動の中でほんの少し意識していただくだけで大変大きな効果を得ることができます。単に整形外科的障害を予防するだけでなく前熟考期、熟考期を中心に活動性を高める具体的な行動目標が見出せない場合においても効果が期待できます。

図 肩関節の解剖図(健康運動指導士養成講習会テキスト,片山)
人の肩関節は図のとおり狭義に考えた場合は1つですが、広義に捉えた場合は6つの関節で構成されています。この関節が組み合わさって動くことにより、腕を回したり、捻ったりの動きを複合的に行うことができます。これに、背骨(脊椎)などの動きが加わり、上半身の大変複雑な動きを可能にしています。
腕を上げたり、横や下から後ろに動かしてみてください。肩関節の機能が著しく低下していなければ、一定のところまではごく限られた関節しか動きませんが、さらにそこから後ろに動かそうとすると多くの関節が動くことを意識できると思います。この単に手が上がる、胸が張れるという動きだけでなく、筋肉が関節を複合的に機能的に動かせる能力が大変重要です。
この能力は、発育・発達期に適度な運動やスポーツを行うことにより得られますが、学生時代を終え社会に出てからはどうでしょうか?特にスポーツを行ったり、意識して動かさなければ、1日の中で腕はほとんど肩の線よりも前で肩の線よりも下の位置にあり、多少、上や後ろに動かすことがあっても多くの関節が組み合わさって複合的に動く位置まで動かすことはほとんどないのではないでしょうか。
そして、肩と頭が前に出て左の写真のような姿勢に陥りやすくなります。その結果、姿勢バランスを悪くして、重たい頭を支える首筋の筋肉の緊張による肩こりや頭痛、めまいなどの不定愁訴の原因となります。

この状態を放置しておくと単に胸が張りにくくなるだけでなく、肩から上背の持つ複合的に機能的に関節を動かす能力そのものが失われていきます(誤った筋力トレーニングを行うことによっても起こります。一流アスリートや指導者の中にも結構おられるので注意が必要です)。そして、より全体の姿勢バランスを悪くして腰や膝への負担も大きくしていきます。また、この首筋の筋肉の過緊張が、頭(脳)への血流を妨げる原因となり、血圧を上昇させる場合もあります。
さらにこの状態が長く続くと、上背は丸く、頭は前で固定された状態になります。こうなると、頭を軽く持ち上げるだけでも、頚椎の一部に大きな負担がかかり、車での追突事故時の「むち打ち症」と同じような状態を引き起こし、手指や肘、肩の痺れなどの原因となったり、場合によっては時には半身不随など重篤な障害を引き起こす直接の原因となります。
そこで対策です。この対策にはさほど大きな努力は必要ありません。日ごろからほんの少しだけ肩関節を複合的に機能的に動かすことです。その代表的な動きづくりが今回紹介する「風になびく洗濯物」「お風呂でゴシゴシ」「目茶苦茶いいかも」です。
風になびく洗濯物

時には手を横に広げ、左右の手を反対に捻る!風になびく洗濯物になった気分で、リズミカルに6から10回程度。
お風呂でゴシゴシ

入浴時、背中を洗ったり、拭く際に左右のバランスよく2から3回程度チョット多めにゴシ、ゴシ、ゴシ!
目茶苦茶いいかも

仕事や家事の合間に左右交互、リズミカルに連続肩後ろ回し!10回程度。背中すっきり、気分もすっきり!その結果、身体活動量増も望めます。
まとめです。私は、朝の洗面後、お手洗いの帰りに、肩のこりを感じたら、下腹を持ち上げるように力を入れて、背筋を軽く伸ばして「目茶苦茶いいかも」を10回から20回適度行っています。また、入浴時には背中を拭くときに「お風呂でゴシゴシ」をほんの少しだけ意識しています。特別に時間を作る必要もなく、日常生活の中で・・・。
補記)足首、手首が硬くなるとそれぞれそこから先の血流が悪くなり、結果として全身の血液循環が悪くなります。ネック(首)がネック(弱点)にならないように上背の機能的な動きで首、頭を守るとともに、入浴時などに足首を回したり、手首を回したりをあわせて指導するとより効果的です。