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脚部(膝)


「転ばぬ先の脚」に持たせ続けたい機能と使い方

 車、電車や航空機などは、部品のひとつ一つがどんなに高価で、優れた良質の素材でできていても、長期間にわたり動いたり、止まったりを安全に継続できる機能が備わっていなければ実用化されることはありません。また、備わっていて実用化されても、人間の安全性や機能性を低下させない運転、操縦や整備があってこそ、長期間にわたり安全に利用し続けることが出来ます。

 人間と車や航空機がまったく同じというわけではありませんが、ある程度同じようなことが言えます。大変優れた骨や筋肉を持っていても、それを安全かつ機能的に動かしたり、止めたりする能力備わっていてなければなりません。また、備わっていてもそれを正しく使う意識がなければ長年にわたり安全に使い続けることは出来ません。

 立つ、歩くに直接関係する脚部に焦点をあてて「転ばぬ先の杖」ならぬ「転ばぬ先の脚」に持たせる機能と使い方についての指導は特定保健指導においても大変効果的です。

 健康づくり運動を考える上で脚部に持たせ続けたい機能の大きなポイントは膝、足首、足指の3つです。

 1つ目は、膝がしっかり伸びる機能です。膝は緩みがちになっていないでしょうか?

 人間は2足で歩けるようになることにより頭を重心バランスのよい位置に置くことができるようになり、急速に脳が発達し、進化したと言われています。さらに、人間には単に2足というだけでなく、膝をしっかり伸ばした物理的には大変不安定な状態で、小さな足の裏の接地面積だけで立ち続けることができるという大変素晴らしい能力が備わっています。膝が緩みがちになればこの不安定な状態で立つ、立ち続けるためへの刺激が失われ、機能そのものが低下します。膝にとって、反動をつけて無理やり強く伸ばすことは好ましくありませんが、ゆっくりジワーッと伸ばす動きは大変重要な役割を持っています。

 2つ目は、足先を手前に引きつける機能です。足首は固くなっていないでしょうか?

 足首を手前に引きつける(背屈させる)動きも大変重要です。この能力が低下するとつまづきやすくなるだけでなく、歩幅が狭くなり歩行能力そのものが低下します。また、立ったり、歩いたりの際に足裏外側への過重を強くしていき、間接的に膝関節障害の発症を高めます。母指球(親指の付け根)を意識して足首をしっかり背屈させる機能的な動きも脚に持たせ続けたい大変重要な動きです。

 3つ目は、足指の機能です。足指の動きは悪くなっていないでしょうか?

 膝、足首の順に話しを進めてきましたが、足指の動きも大変重要です。長座(足を伸ばして座る)になって足先を伸ばしながら(底屈させながら)足指を開いてみてください。足指は開きにくいと思います。反対に足先を手前に引きつけながら(背屈させながら)足指を開いてみてください。開きやすいと思います。そしてしっかり足指を開いて、母指球を意識して足首をしっかり背屈させた時の大腿部はどのようになっているでしょうか?
足指が開くという動きと、先の2つポイントである足首を背屈させる能力と、膝をしっかり伸ばして腿の筋肉をしっかりさせる動きは機能的につながっています。つまり、足指の開く動き、足首を手前に引きつける動き、膝を伸ばす動きのどの機能が低下しても脚全体の機能低下をもたらします。

以上の3つのポイントを大切にした動きが「転ばぬ先の脚」に持たせ続けたい最低の機能です。

 私がお勧めする動きづくりとしては、入浴時に足指の間に手指を入れて足指の間を広げる「足指バンザイ」(写真左)と膝をジワーッと伸ばして、大腿部の筋肉をしっかり緊張させる「つながりを大切に!」(写真右)です。

 さて、その「転ばぬ先の脚」の安全な使い方ですが、大切なポイントは膝です。

 膝関節は解剖学的には1つですがバランスよく動かすという意味では写真の丸印が示す内側と外側に2つあるとイメージすることが大切です。それぞれの間の黒い部分に軟骨があります。片方に偏りすぎることなくバランスよく負荷がかかっている場合は膝関節は大変傷めにくい状態です。しかし、バランスが崩れてどちらか一方に極端に負荷がかかるようになれば、急速に軟骨をすり減らしてしまいます。膝が母指球の真上に乗っていれば比較的左右のバランスは保てるのですが、O脚になれば左右のバランスは崩れ内側に荷重がかかり内側の軟骨をすり減らしてしまいます。さらに、日本人は欧米人に比べてO脚タイプが圧倒的に多いといわれています。それだけに膝関節障害の予防に対する注意は大切です。

 そこで、脚の安全な使い方のポイントですが、日ごろから膝の位置を強く意識することです。個々の状態により多少の差はありますが膝が母指球の上に真っ直ぐ乗るように意識して、立ったり、座ったり、歩いたり、階段を利用することが大切です。

 まとめです。脚の機能的な動きが失われることは、直接、立つ、歩く能力の低下をもたらします。車、電車や航空機などは、部品が痛めば交換することになります。しかし、基本的に人間には交換できる部品はありません。その代り人間には軽度の損傷であれば安静や正しく動かすことにより、それを修復する自然治癒能力が備わっています。この自然治癒能力はときには元の状態以上に機能を回復させることもできる大変素晴らしい能力です。

 今、立てる、歩ける人にとっては、立ち続ける、歩き続ける能力を維持することが健康づくり運動の目標のすべてと言えるかもしれません。エネルギー消費量を増すことを意識しすぎて、膝を痛めてしまっては何にもなりません。「転ばぬ先の脚」に持たせ続けたい機能と使い方については特定保健指導おいてきわめて重要な指導のポイントです。

(亀澤)


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